お魚くわえて

鍼治療が世界を変えるまでの記録

鍼灸はアイドル?「チャレンジ!鍼灸師は”医師”を3時間で納得させられるか?!」に参加してきました。

鍼灸師が医師を説得?

みんさん、こんにちは。札幌にある手作り鍼灸院、快気堂鍼灸院白石の谷地です。

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3月7日、札幌市中央区にあるマタニティ専門鍼灸マサージ院「天使のたまご」さんにお邪魔して、チャレンジセミナー「チャレンジ!鍼灸師医師を3時間で納得させられるか?!」に参加してきました。

 

鍼灸不妊治療に対するニーズが高まる中、鍼灸は本当に不妊治療に有効なのかを産科の医師と鍼灸師がディスカッションするという、意欲的なセミナーです。私の知る限り、こういう試みは初めてではないでしょうか?

鍼灸師の間でも注目度が高く、札幌での開催にもかかわらず、全国から鍼灸師の先生が集まりました。

参加の理由

私が、参加した理由は主に2つあります。

 

一つ目は、鍼灸について医師と公の場でディスカッションするなんてチャンスは滅多にないので、逃したくなかったこと。

 

二つ目は、技術系のセミナーではないのに参加費18,000円と、札幌で開催される鍼灸セミナーでは高額なんですが、それを払ってまで参加する人に興味があったこと、です。(ちなみに、技術系のセミナーは10万円超えることも珍しくありません。)

 

参加者は、鍼灸師、医師以外にも、理学療法士や看護師もいました。そのため、様々な視点から鍼灸を考え直すきっかけになりました。

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内容については、オフレコ(立場を超えて本音で議論するためとのこと)という規約なので書けません。 ただ、今回参加することで、個人的に色々考えさせられたことがあるので、それについて書きたいと思います。

鍼灸はアイドル

改めて感じたのは、我々鍼灸師鍼灸東洋医学が本当に好きなんだな〜ということ。

まあ、休日にわざわざ高いお金払って参加する人たちですから、好きなのは当たり前なんですけど。

ただ、この、鍼灸が好きすぎることが、医師をはじめ、鍼灸業界の外の人と鍼灸についてお話しするときに大きな足かせになるなと思いました。この関係って、濃いアイドルファンとそうでない人との関係に似ている気がします。

[caption id="attachment_1166" align="alignnone" width="480"] By: Kana Natsuno[/caption]

例えば、あなたが、あるアイドルにちょと興味を持ち、そのアイドルが大好きな濃いファンに「オススメの曲って何?」と聞いてみたとします。

すると、濃いファンはそのアイドルが好きすぎるために「全アイドルの歴史における、その子の立ち位置」であるとか「アイドルが持つ偶像性と社会的なムーブメントの相関関係」など、すごく抽象性の高い哲学的な話が始まってしまい、肝心のオススメの曲については、結局ぼんやりとしかわからない、なんて事故がよく発生しがちです。

脳が喜ぶ抽象性

濃いファン同士で語り合うなら問題ないのですが、そうではない人にとってはわかりにくいし、ちょっと引いてしまうような状態です。好きな人同士って、それを語り合う時に、どんどん抽象性の高い話になっていきます。

抽象性の高い話というのは、脳にとってレベルの高い遊びなので、とっても楽しいのです。

しかし、語り合う対象に対して、アイドルで言えば、曲とか、出演ドラマとかの具体的な情報をあんまり持ってない人にとっては、抽象性の高い話はチンプンカンプンです。濃いファンにとってすごい楽しい話が、そうでない人には通じない。そういうことって、多々あります。 [caption id="attachment_1169" align="alignnone" width="480"] By: Christian Benseler[/caption]

鍼灸は概念の集合体

鍼灸師が、鍼灸の話を一般の人にするときも同様のことが起きがちです。だだでさえ、東洋医学の理論って抽象的な概念ばっかりです。

臓器と言っても、具体的に肝臓や腎臓などの内臓を表すのではなく、体で起きる現象をカテゴライズした概念だったりして、とにかく抽象的になりすぎる危険性があふれています。

外部の人、特にお医者さんに話すのであれば、数値や統計、論文に発表された実験モデルなど具体的な要素を使って、わかりやすく説明する努力がもっと必要だと思いました。

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鍼灸AKB48

さらに、以前にも「Jazzと鍼灸」で述べましたが、鍼灸って、治療法も理論も鍼灸師によって千差万別なんですよね。

同じ古典派と言っても、古典の解釈が多様であるし、西洋医学系と言っても、トリガーポイントや、皮膚電位など、一人一流派と呼ばれるほどバラバラです。 同じ鍼治療といっても、鍼を使うという行為(かざすだけで刺さない人もいます)だけが共通していて、中身は全く違ってしまっています。

例えて言うなら、AKB48でしょうか。

あなたがファンの交流イベントに行って、「AKBの魅力って何?」と聞いたとします。 一人は前田敦子さんについて永遠と語り、一人は指原莉乃さんについて夜通し語る、といった具合にみんな言うことはバラバラで、それも、それぞれのファンは、他のAKBメンバーについてはちょっとよく思っていないので辛口になり、AKBについて肯定と否定が繰り返される始末。 結局、あなたはAKBについて良いのか悪いのかわからなくなる、そんな状態です。

[caption id="attachment_1168" align="alignnone" width="480"] By: kimubert[/caption]

目指すところはいつも一緒です。

東洋医学は明確な答えがなく、多種多様なのが良い!という意見ももちろんあります。

個々の患者さんに対しては良いのですが、医師と連携して医療の一つとして信頼を得るためには、鍼灸師みんなが共有できるしっかりとした土台が必要だと思いました。

日本の医療は諸外国と比べても、極端に医者中心なものとなっています。

鍼灸がそういうシステムの中に入るべきかどうかという問題もありますが、もし、日本の医療システムの一員として協力関係を築いていく方向を目指すなら、医師の理解が必須になります。

そのための課題が、今回のイベントで明確になりました。越えるべき壁はエベレストより高く感じますが、問題が明確になったことで、解決策を探る道筋も見えてくるものです。

よりシンプルに、より分かりやすく。 快気堂鍼灸院白石の目指すテーマはいつも同じところにあります。 IMG 1817