前回までのお話
なかなか夜寝てくれない息子くん(3歳児)対策に、読み聞かせすると10分で子供が寝ると評判の絵本『おやすみ、ロジャー』を買ってきて、5日間試した経過を以前ブログに書きました。
「おやすみ、ロジャー」で本当に3歳児が寝るのか検証してみた。 | ドアのノックはゆっくりと
その時の内容をまとめますと、
1、効果が最も出やすいと考えられる初日は、寝るまで25分以上かかり、判定は微妙だった。 2、その後の3日間は、こちらの事情で、『おやすみ、ロジャー』の効果の検証が困難だった。 3、5日目は、ママの代わりにパパが読んだところ、息子がブチ切れて絵本をたたき落とした。 4、寝かせるためだけに買ってきた本を大事にする息子の姿には、半端ない罪悪感を感じる
といった感じでした。
今回、ついに、我が家における『おやすみ、ロジャー』案件に結論が出ましたので、報告したいと思います。
6日目の息子くん
ロジャーとの生活も6日目になりました。この日は珍しく、なぜかパパにべったりな息子くん。寝室に行っても「パパの横で寝るー」と発言。私が、「さて、ロジャーでも読みますか?」と聞くと「パパが読んでよー」と甘えてきます。
昨日の晩、鬼のような形相でパパが持つ絵本を叩き落とした息子と本当に同一人物なのでしょうか?息子なりに、反省したのかもしれません。
いずれにせよ、パパ冥利につきる状況です。張り切って『おやすみ、ロジャー』を読み始めます。
『おやすみ、ロジャー』の秘密
この本のポイントの一つに、言葉のリズムがあると思います。
眠くなるように、一定の揺らぎが生まれるような言葉の配置がなされている感じがします。ただ、そのために、同じような言葉が、狂気を感じるレベルで繰り返されるので、読む方には、相当な集中力が要求されます。
あるいは、極めて適当に読み流す方法もあると思いますが、効果を最大限に発揮させるためにも、この無限地獄に負けないように、一つ一つの言葉を丁寧に読み上げる覚悟を私はしました。
「いくらでも読んでやる!」そんな強い気持ちで燃えていました。
しかし、一ページ目を読み終わったところで、早くも『おやすみ、ロジャー』の命運が決しました。
運命の一言
「パパー、あのねー、これじゃなくて『はらぺこあおむし』読んで欲しいの。」
息子の突然の一言に、私は少し混乱しました。素数を頭の中で数えて、心を落ち着かせます。
絵本作家の大スター、エリック・カールが描く、シンプルなのに何度読んでも楽しい絵本界の金字塔『はらぺこあおむし』。どんな子供でも、突然、読みたくなるのも仕方ありません。
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今夜が、たまたま『はらぺこあおむし』を優先して読みたい気持ちが不意にやってきただけかもしれません。そうなるとロジャーの責任は問えません。
そこで、「どうして、あおむしさんがいいの?」と私は聞いてみました。
「だってねー、この本(おやすみ、ロジャー)面白くないんだもん。」
それを聞いた瞬間、私と妻は大笑いしてしまいました。
解放される魂
なぜなら、息子には言わなかったけど、私も妻もそう思っていたからです。「寝かしつけたい」という下心のみで、カスみたいな内容だと思いながらも、自分を騙し騙し読んでいたのです。
「絵も怖いし。こんな変な顔やだー」と言って、息子は『おやすみ、ロジャー』の挿絵を指さしました。
息子は、麻薬中毒患者のようなロジャーの表情を本気で怖がり、今にも泣きだしそうです。
そこで私は、「変な顔って、こんな顔?」と、ドラッグ中毒者としか思えないロジャーの顔の真似をすると、息子は大爆笑しました。
「ママもやってー」と息子が言うので、妻もロジャーのジャンキーな顔真似をしました。「怖いよー」と言いながら、また大爆笑。
私が「息子くんもやってー」と言うと、見事なロジャー顔を披露し、3人で大爆笑しました。
私は、3人で笑うと、不思議と、胸の奥にあった『罪悪感』という切なさの塊が溶けていくのに気が付きました。すっかり、切なさの塊がなくなってしまうまで、何度も、何度も、3人でジャンキーうさぎの顔真似をして、必要以上に大きな声で笑いました。
さよなら、ロジャー
次の日、「もうロジャーはいらないかい?」と息子に確認したところ、「うん、もういらない。だって、つまんないし、こんな変な顔やだよー」と、またロジャーの顔真似をしました。
正直、内容も挿絵も、息子の情操教育には良くない気がしていたので、私たち家族は、ロジャーとお別れすることにしました。
6日間と短い間でしたが、私たち家族の心に、大きな思い出となったロジャー。ロジャーにふさわしい新しいお家を慎重に検討した結果、ブックオフに決定しました。
早速、家族3人でブックオフに行きました。実は、私たち家族はブックオフにはほとんど行ったことありません。
妻が、本は新本で買うというポリシーの持ち主だからです。
家族3人で訪れたのは初めてでした。でも、家族にとって特別なロジャーのためなら、仕方ありません。
慣れないお店、大切なロジャーが新しいお家でうまくやっていけるかという不安で、緊張する私たちを、行きすぎた店員教育の賜物なのか、ロジャーの表情に似た顔をしたお兄さんが、優しく出迎えてくれました。
お兄さんは、ロジャーをうやうやしく掲げ、慎重に状態をチェックしました。そして、これでどうでしょうと、紙に『¥200』と書きました。
私たち3人は、ロジャーの内容を考えると、あまりにも妥当な値段だと思えて、ケラケラと笑いました。
店員のお兄さんは、ますますロジャーに似た表情をして、「よろしいですか?」と言いました。
息子もロジャーの顔真似をして「いいですよ!」と言いました。
まとめ
結局、「おやすみ、ロジャー」の10分で子供が寝るという効果については、いまいちわからないままでしたが、我が家には必要がないということはわかりました。
絵本としてのロジャーは次のような欠点があると思います。
1、面白くないので、繰り返し読むのに耐えない。 2、絵が怖い。気落ち悪い 3、『眠らせたい』というのが購入理由の大きなウエイトを占めるので、罪悪感がある。
といったところでしょうか。三つとも、あくまで私たち家族の主観なので、正反対に思う人もいるかもしれません。
何にせよ、思った以上に息子の面白い反応が見られるという大きな収穫がありました。短い間で、こんなに笑いを起こした絵本は今までありませんでした。息子の顔真似のレパートリーも増えたし、200円分の価値はありました。
ありがとうロジャー。新しい家でも、いっぱい笑ってもらえますように。