毎週木曜日は帯広の北斗病院へ快気堂鍼灸院のスタッフ総出で行っています。
北斗病院には鍼治療センターがあります。
ここは、鍼治療で世界の医療を救うことを目的として、医師の協力のもと2018年9月に開設されました。
現在の鍼灸に不足している研究・臨床・教育の場を鍼灸師に提供するのが鍼治療センターの役割です。
快気堂スタッフの他に、毎週、全国から鍼灸師の先生達が鍼治療センターに集います。
鍼灸師5名、教師1名、学生2名
今回は、川原朋夫先生(ひなかた鍼灸院)、福田みどり先生(マザーリーフ鍼灸センター)、池本瑞穂先生というレギュラーメンバーの他に、鍼灸科教員の西川隆一先生(スポーツ&メディカル専門学校)、学生の角田まのさん、松本りらさん(共に北海道鍼灸専門学校)がいらしてくれました。
これからの鍼灸を担っていく学生さん達がいらっしゃるのは嬉しいです。
−5℃の世界から−12℃の世界へ
帯広へはJRで3時間近い旅になります。10時の診療開始に間に合わせるため、始発で向かいます。この日の朝の札幌の気温は−5℃。十分寒いですが、帯広は最低気温−12℃という予報です。
電車の中でも、今日の治療の予習、新しいツボの効果の共有、これからの鍼灸の行方など、鍼灸の話題ばかり。驚くことに、帰りの電車も症例検討に始まり、取穴の確認、新しい発見についての考察など、鍼灸の話題尽くしになります。
中でも池本先生は、以前、帯広帰りのJRが地震で止まって車内で一泊を強いられたときもツボをとる練習をしていたという逸話の持ち主です。
考えてみれば、平日に仕事を休んで帯広まで研修に行く位ですから、鍼灸ガチ勢がそろっているのも当然かもしれません。
知らないうちにニュースになってる鍼灸師
今回は熊と衝突する事も無く、無事に北斗病院に到着。すでに待っている患者さんがいるので、慌ただしく診療がスタート。
朝一番は、通院歴が最も長い患者さん。私の顔を見て、嬉しそうに「見たよ!」とおっしゃいます。何のことかわからず、思わずズボンのチャックを確認しましたが閉まってました。
お話を伺うと、どうやら北斗病院の広報誌に私が紹介されているようです。さっそく、広報誌を見てみると、10月に「乳がん講演会」に出演したときの模様が写真つきで載っていました。掲載されることを全く知らなかったのでビックリしましたが、映りの良い写真を使ってくれてたので良しとします。
鍼灸師の活動が大きな病院の広報に役に立つと考えていただいたとしたら、メチャクチャ嬉しいですね。
鍼治療センターでの流れ
鍼治療センターではガチの臨床研修が行われます。
まず、他科の医師から患者さんが紹介されてきます。
研修鍼灸師が患者さんに対して、研究趣旨の説明、問診、施術までをトータル30分以内で行います。
施術が終わったら、患者さんに効果についてのアンケートを記入していただきます。
一挙一等足が査定を受ける意味
鍼治療センターでの研修は、普通の治療院とは大きく異なる点が二つあります。
一つは、実際の施術中に指導鍼灸師のアドバイスを受けられることです。スポーツで例えて言うなら、試合中、常にコーチがそばにいてアドバイスを受けられるということです。
通常の治療施設だと、患者さんに「指導してる方の人が施術を担当してよ」と言われてしまいます。なので、この形はなかなかできません。
もう一つは、医師や他の鍼灸師達に一挙手一投足を査定されながら治療をするという事です。
通常、鍼灸師は患者さんと一対一で治療にあたることがほとんどです。他の専門家の視点から査定される事で、自分1人では気付けなかった課題が見えてきます。
ガチの施術を晒すわけですから、肩書きや実績では誤魔化すことができない臨床力が露わになります。成長のためにプライドを捨てる勇気が必要ですが、経験した鍼灸師は面白いように臨床力が伸びていきます。
実際に、6ヶ月の研修を繰り返した研修鍼灸師は、臨床歴30年のベテラン鍼灸師が結果を出せないような難しい症状に対しても、楽々と効果を出しています。
抗がん剤副作用 vs 鍼灸師
現在、鍼治療センターでは、抗がん剤の副作用による足の痺れの相談が多くなっています。
今回、印象的な症例を2例、紹介させていただきます。
まず、通院7回目になる抗がん剤治療中で、足の痺れに悩む患者さん。鍼治療1回目から顕著な変化を感じていただけてました。
今回の施術後、「以前は抗がん剤の点滴を受けた日は歩くこともできなかったけど、今回は全く大丈夫だった。鍼が効いてると思います。」と教えてくれました。
副作用が強いと、抗癌剤治療を中止せざるを得ないときがあります。そうすると、抗癌剤が最も効果的な時期を逃してしまう可能性があります。鍼治療で直接ガンを治すことは難しいですが、抗がん剤治療のアシストをすることで、回復の可能性を上げることができます。
もう一人、同じ症状で、こちらも通院7回目になる患者さん。こちらは中々変化が出ず、我々も苦戦していました。しかし、今回担当した川原朋夫先生が、新しい視点からアプローチしたところ、「足に温かみをかんじてきた。」「今までで一番楽。」と言っていただけるような変化が出ました。
鍼灸で最も大事なものは流派?哲学?
ここにも鍼治療センターの強みがあります。
既存の鍼灸理論に正解を求めていたら、新しいチャレンジは出来ません。川原先生の選択を理論的に不正解として採用しなければ、新しい発見は生まれませんでした。
私たちは鍼治療の流派や哲学に興味は無く、最も効果的な方法にのみ関心があります。
色んな鍼灸師に参加してもらうと、同じ症状に対しても、様々な視点から考えることが出来ます。その中で、より効果があるものを実際の治療で確認することができます。確認されたものを、チームで共有し、さらに検証を重ねていきます。
これを20〜40人程の患者さんを対象に毎週繰り返しています。
発見は毎週のようにあり、チームの臨床力は伸び続けています。
知識の共有の向こうに
私たちの目標は鍼治療で世界の医療を救うことです。自分達だけが腕を上げることではありません。
そのため、鍼治療センターでの発見は広く共有したいと考えています。
鍼治療センターまで来て頂いた方には、時間内にできるだけお伝えしています。
学生さんから、この道何十年という先生まで、いらっしゃる方は様々ですが、みなさん何かしら発見をして帰られています。そして、何度も再訪してくれる方が多いのは嬉しい限りです。
鍼治療センターの検証により、鍼治療で確実に効果が出せる症状は着実に増え続けています。鍼治療センターで治療しているのは、薬や手術など病院の治療では改善が難しいと医師に判断され、紹介されてきた患者さんばかりです。そういった患者さんの症状に着実に効果が出せているということは、医療として非常に価値のあることです。
同じ結果を出せる人が増えていけば、鍼灸への信頼が増して行きます。そうすることで、さらに多くの人が鍼治療を受けるようになり、助かる人が世界中で増えていくはずです。
鍼灸で世界の医療を救う夢は、多くの鍼灸師が持っているはずです。もし持っていたら、私たちにお力をお貸し下さい。
私たちの活動に注目していただく事も、力になります。参加して頂ければ、もっと大きな力になります。
北斗病院研修に参加する方法
どなたでも参加することが出来ます。ただし、鍼治療センタのスペースの関係で一度に参加できるのは3〜5名です。
ご興味のある方は、JASTACあてにメールにてご連絡下さい。
毎週木曜日、10時から17時(12時から1時間休憩)が通常の診療時間になります。
お問い合わせ先:jastac2018@gmail.com
JASTAC:https://jastac.or.jp/