2019年の後半は講演活動に勤しみました。
ざっと振り返ってみると
10月5日 乳がん講演会
11月24日 北海道鍼灸専門学校学術講演会
11月30日 北海道大学医学部第二病理長島賞受賞記念講演
12月9日 長崎県こころ医療福祉専門学校
といった感じです。
乳がん講演が一般向け、長島賞記念講演が医師・研究者向け、その他は鍼灸師・鍼灸学生向けの講演です。
今回は、11月24日に行いました北海道鍼灸専門学校学術講演会の講演について報告させていただきます。
依頼主のオーダー
講演会は、誰に何を伝えるかが重要です。
今回の講演、依頼していただいたのは、北海道鍼灸専門学校同窓会長である金野淳平先生(金野はり灸整骨院)です。
180名程の参加が見込まれ、学生だけで無く、卒業生の先生達もいらっしゃるとのことでした。
伝える相手のカテゴリーが広いので、何を伝えようか迷うところです。
そこで、講演内容に関して金野先生にお伺いすると、
「自由にやって下さい」との解答が、、、。
講演を通して伝えたいこと
講演で伝えたいことは、鍼灸の可能性です。
数年前まで、自分も鍼灸の可能性をぼんやりとしたものとしてしか捉えられていませんでした。
それが、「ツボの精度を高め」、「一本打つごとに鍼の効果を詳細に確かめる」というごく当たり前の作業を繰り返すことで、鍼治療には想像を遥かに超える可能性があることに気付きました。
鍼治療は、症状によっては、薬や手術を含めた既存の治療を凌ぐ効果があるのです。
自分だけ、あるいは、鍼灸師だけが主張していても、世界は変えられません。北斗病院では、医師・研究者の協力を得て、この事実をはっきりと確認しています。
マッサージの補助としたり、漢方の付け足しとしたり、美容を入り口としたり、そんな感じで鍼灸を扱うというのも一つの方法だと思います。
しかし、鍼灸には医療のメインストリームで主役を張る力があることが、医学的にもわかってきています。
鍼灸には医療の世界を変えてしまう力が確実にあるのです。
このメッセージを伝えたくて、講演の内容を練りました。
講演はチャレンジ
学術講演なんて言われると、「つまらない」というイメージが湧いてきます。つまらないと思われると、どんなにメッセージを伝えても届きません。
では、なぜつまらないんだろう?
と考えてみると、チャレンジが不足しているからだと思います。
鍼灸師の講演には、
自己紹介→座学の講義(60分)→余った時間で実技(いつもやっている治療の手順を再現)
という定番があります。
流派を代表したり、本を出版しているようなカリスマ先生だと問題ないでしょうが、自分のような一鍼灸師が同じことしても、聞いてもらえる可能性は低く、下手すると全員睡眠状態の危険性があります。
聞いている人にワクワクドキドキしてもらうためには、定型をぶっ壊すチャレンジが必要です。
そこで、今回は、テーマを「鍼灸師人生は冒険」として、ドラクエ風に伝えられるかにチャレンジしました。
講演に来てくれた鍼灸師+α
講演には、多くの方が駆けつけて下さいました。
7割くらいが学生でした。
お世話になった大先輩、鍼灸師会で重責を担われていた方、流派を代表する先生など、これまでの鍼灸を引っ張って来られた先生達が何名もいらっしゃいました。
あとは、いつもの札幌鍼灸師チーム、そして、父、母、妻、息子(7歳)。
鍼灸師向けの講演ですが、息子のたっての希望で特別に参加させていただきました。
息子の前での講演というのも、一つのチャレンジです。
いきなりデモ治療
講演の冒頭にデモ治療をしました。
普通の鍼灸の講演は、最後におまけのようなデモをする形がほとんどです。
鍼灸の有用性を語るのであれば、実際の結果が最も説得力があると思っています
ということで、実際に症状のある人をその場で募集して、ぶっつけ本番でする施術を冒頭に持ってきました。
上手くいけば、説得力が生まれますが、しくじれば、この後の90分の講義は地獄になります。
そういうスリリングなチャレンジが、見ている側にも伝わって、ドキドキして欲しいと思っています。
デモは2名できました。
一人目は、腰をそらすと出る腰痛。
二人目は、前日に受け身の練習をして痛めた首。
どちらも結果を出すことができました。時間があれば、もう少しチャレンジしたかったです。
鍼灸の可能性
デモの後は、その鍼治療が、どうして効果があるのかについて、科学的なデータを交えてお話しました。
そして、鍼治療が病院でどのように役立っているのかについて、病院の手術や薬、リハビリなどで改善がみられなかった患者さんを、実際に鍼治療で改善している例をお話ししました。
そこから、どのような鍼灸の可能性が見えてくるか、私たちが取り組んでいるプロジェクトを交えてお話ししました。
講演の感想
講演を終えて、たくさんの方に声をかけていただきました。
お世話になった先生に「自分の言いたいことと同じだ!」と言われて、嬉しかったです。
学生さんからも「いつも爆睡ですが、今日は最後まで聞けました。」、「病院の研修を見学に行きたい。」、「聞き終わってからもドキドキが止まりません。」など、涙がチョチョ切れるお言葉をいただきました。
「もっと話を聞きたい!」とのことで、家までの帰り道をご一緒させていただいた方もいました。
会心の出来!と喜び勇んで息子に感想を聞いてみると、
「パパだけふざけてたね」
というクールな反応をいただきました。まあ、、その通りかもしれません。
冒険は続く
講演活動は、「鍼灸で世界を変える」ために必要なことだと思っています。
準備の大変さや、休診しなければならない経済的プレッシャーはありますが、講演を聞いてくれた人達が、鍼灸の可能性に熱い視線を向け始める瞬間に何物にも代えがたい興奮と喜びを覚えます。
「鍼灸で世界を変える」まで、このチャレンジは続きます。
そして、冒険は遠く離れた長崎へ!