お魚くわえて

鍼治療が世界を変えるまでの記録

「怒らない」子育て戦略、3つの理由。

子供の価値観

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ある休診日の午後、いつも通り鍼灸院でパソコンに向かってお仕事をしてると、外で3歳の息子の大きな泣き声がします。

さっき、ママと公園に行ったばかりなのに、どうしたんだろう?と、外に出てみると、号泣している息子と、うなだれているママが目に入りました。

ママに事情を聞いてみると、前に公園の砂場で遊んでいたペットボトルが無くなってしまっていたそうで、それを息子が怒って泣いているのだと言います。

ゴミとして処理されてしまったのでしょうか。

いらない空のペットボトルなら腐るほどあるので、「これじゃダメかい?」と差し出してみます。が、「これじゃない!!」とますます泣きわめく始末。

色々なペットボトルを試してみましたが、ダメ。それなら!と、大好きなジュウオウジャーの写真をプリントアウトし、ペットボトルに貼り付けてみましたが、「ちがう!!」と手から叩き落とされてしまいました。

薄汚れたペットボトルのどこが良いのか、他のと何が違うのか、私には理解できませんが、息子なりの理屈があるんでしょうね。子供って不思議です。

私の駄々っ子対処法

気持ちが収まらない息子は、暴れた勢いで、車道に飛び出そうとするので、無理矢理抱っこしました。

こういうときは、抱っこしてお話しする事にしています。気持ちを聞いたり、他の事を提案したり、関係ない事を話して、気を紛らせようとしたり。興奮しているので、なかなか話が通じませんが、粘り強く話しかけます。

最近は、こういう風に言ってみてます。

「どうして泣いてるの?パパが助けられる事あるかな?パパがお手伝いできる事ある?」と。

そうすると、不思議と泣きやみ、気持ちを切り替えて、他の提案をしてくれる事が増えてきました。今回は、実現困難な「無くなったペットボトルを探せ」から、比較的容易な「暑いからかき氷食べたい」に欲求が変わりました。

気持ちが落ち着くと、急に「ママ、さっきはごめんね」と言って大好きなママと仲直り。たまらず、3人で抱き合いました。

怒らない子育て戦略

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よく、「優しそうなパパですね、全然怒ったりしないでしょう」と言われます。それもそのはず、私は、「怒らない」という子育て戦略をとっているのです。決して人格者だからではありません。

「怒らない」戦略を採用しているのには、理由があります。

3年半、幼児を観察してきて、幼児の心理は、大体次のようなモノで出来ていると感じました。

・快への素直な欲求と追求

・不快への恐怖と逃避

・言葉の発達とともに、育ってくる小さな理性

・モノマネ学習

半分動物

3歳までの幼児は、言語がまだ発達途中です。半分動物みたいなモノだと思っています。 言葉をうまく使いこなせないうちは、物事の理屈が理解できないと思います。理屈がわからなければ、理性も生まれません。

もし、そのような状態で叱りつけても、なぜ、叱られたのか理解できないはずです。

例えば、深夜起きてきて、パパの大事なおまんじゅうを10個全部食べてしまい叱られたとします。

言語がなければ、深夜という時間の意味、10個は多すぎるという数の概念(言語を持たないカラスは、1〜3までしか数えられないと言います。あとは、”たくさん”と認識するとか)、パパの大事なモノであるという大人の事情を認識する事が出来ません。

幼児らしい「甘いものを沢山食べたい」という快への素直な欲求を追求をしていたら、突然叱られるという恐怖の不快体験。

「大好きなパパが、どうして楽しい事を邪魔するの?意地悪なの、怖い、悲しい、ウェーン!!」となります。

理解できないまま、強い体験をすると、無意識に刷り込みが起こります。

無意識の刷り込みの弊害

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「楽しい事を追求したら、怖くて悲しい事が待っている」と、理由もなく不安を感じる事は無いでしょうか。

よく、「調子に乗ってたら、痛い目に遭うよ」なんて言われますが、最近の脳の研究では、フロウ状態(スポーツなどではゾーンとも言われる)といって、調子に乗っている状態のときに、人間の能力が一番発揮される事がわかってきました。

それにもかかわらず、「調子に乗ったら痛い目に遭う」という刷り込みを、小さい頃からされてしまうと、一番良い状態のときに、不安や恐怖で体がこわばって、実力が発揮できくなってしまいます。

サッカー日本代表の選手が、絶好のチャンスでシュートを外すのも、こういった刷り込みと無縁ではないはずです。

私としては、息子に、自由に伸び伸びと調子に乗ってもらいたいのです。まあ、親の思ったようには育たないものですが、、。

ほとんどモノマネ

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また、言語が発達途中の、3歳以下の幼児の学習の大半が、モノマネによるものだという事も注目すべき点だと思います。

理由もわからず、大好きなパパに怒られて、幼児は何を学ぶでしょうか?

悪気なく大人のルールを破り、理屈を説明しても理解せず、楽しい事を邪魔されたとギャンギャン泣く息子という、解決困難で理不尽な事態に直面したとき、「感情的になって怒る」という選択をすれば、「困難な状況に直面したとき、感情的になる」という事を子供は真似するかもしれません。

一方、「出来るだけ冷静に、色々工夫してみて、しつこくあきらめず、結果ダメでも過程を楽しむ」という姿を見せれば、困難な状況に陥ったとき、それを真似してくれるかもしれません。

私は冒険野郎マクガイバーのように、息子がピンチを創意と工夫で乗り切る男になって欲しいと密かに願っていますが、子供は思ったとおりには絶対に育ちませんよねぇ。

避難場所としての信頼

もう一つ、「何かあったとき親に相談する」ようになって欲しいと思っています。

そのためには息子の信頼を勝ち取らなければなりません。

何か、問題のある行動をしたとき、頭ごなしに叱るのではなく、息子なりの理由がないか、まず最初に聞く事にしています。

もちろん、現段階では「やりたかったから」みたいな答えしか返ってきませんが、問題行動の裏に何らかのストレスが隠されていることが多くなる思春期を迎える前に、パパなら気持ちを言える、という信頼を得られればいいなぁと思っています。

以上のような理由で、私は、「怒らない」という戦略をとっています。正直、「怒る」よりも、手間と時間が掛かりそうですが、ペットボトルの件の様に、「怒る」よりも意外と早く解決できることも多いです。

子育てという問題の難しさ

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子育てには正解はありません。これだけ長い期間の試みは、不確定要素が多すぎて、何をしたからこうなるという法則を科学的に見つけだすのはほぼ不可能です。本屋には子育て本が山のようにあり、みんな違う事を言っているのはそのためです。

子供は親の思った通りには育ちません。また、その方が健全な気がします。これがまた、子育ての正解を導くのを困難にさせます。

でも、正解がないからこそ、何か成果が見えたとき、これ以上無く感動するのかもしれません。

謝る事を強制してこなかったのに、「〜してごめんね」と言うようになった息子。

パパが抱きしめると、「ママも入れて、家族3人でギュウしよう」という息子。

おもちゃ売り場で、欲しい商品を抱えてだだをこねるが、今は買えない理由と、こうしたら買えるという説明をすると気持ちが変えられるようになってきた息子。

叱らずとも、「言う事聞かないと山においてくるぞ!」としつけずとも、理性がほんのりと育っている感じに、ほっと一安心ですが、理屈がわかってきたということは、子育ても、次の段階へ進む必要があるのかなぁと感じています。

言葉が発達し、理性の片鱗を見せ始めた息子。動物から、ちっちゃい人間になりつつある姿に、毎日ますます目が離せなくなっています。